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身の回りの出来事から、精神世界まで、何でもありのブログです。


by levin-ae-111
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ETソウル外伝(3)

スコットは偶然に東洋の偉大な贈り物の一面を発見したが、ただ少しだけ、自分が誰で、なぜ自分がその様に感じたかを見出す方向に近づいたに過ぎなかった。
スコットが大学に入ったのは、ちょうどそんな混乱した精神状態の時で、この時期に自分の存在についての苦悩が、山崩れのように巨大な圧力をもって雷鳴とともにのし掛かってきた。
オハイオのオバーリン大学の在学中には、子供の頃の苦痛、得体の知れない毎晩の孤独、やり場のない怒り、嫌悪を感じる社会への不安、こうした総ての好ましくない要素が彼の上に崩れ落ちてきたのである。
これらの正体不明の言いようの無い不安に、スコットは、精神的に打ちのめされてしまう。
原因不明の苦しみで心身がバラバラになった。それが、あらゆる瞬間に重くのし掛かり、言いようの無いみじめな気持ちだった。スコットは、それまでこんな苦しみを味わったことは決してなかった。
この様な時期に、彼を本当に救ってくれたのが『瞑想』だったという。

 そのきっかけはオバーリン大学の最初の学期に、正式科目ではない東洋の宗教の講座を偶然に聴講することになった。彼らの先生(大学院生だった)は、最初のミーティングで座禅を組むことを教えてくれた。それは、日本仏教の伝統的な瞑想による修行法だった。
無論、スコットは本から得た知識で独自の瞑想の経験を持っていたが、ここでの瞑想は適切な指導の下で行われたので、自己流とは違い感銘深いものになった。
教師のジェイは熱心な黙想家で、社会活動家だった。彼はスリランカで寺院の抗議運動を指揮したことがあり、講義では自分の体験から得た知識を語っていた。
 ともかく、何かが変わり、この時から瞑想することが、スコットの人生の慣わしになった。今日、振り返ってみると、自分を縛っていた苦難が、人生の初期の頃(若い頃)にその正体をあらわにしたことは幸運だったと感じていると、スコットは述懐している。
何故ならば、そのことが彼を『解放への大通り』を歩き始める道を与えてくれたからだ。それはスコットが、今日でも思い出して感謝していることなのだ。

 しかし、瞑想を始めた頃は、事態が好転するどころか、かえって悪化した。スコットは苦悩を静めようと、毎日毎日、瞑想を続け、自分の呼吸を整えることに集中した。しかし直ぐに、意識の中にひとつの裂け目が広がって行くのを感じた。まるで地球の断層のように大きく口を開け、瞑想の輝かしい歓喜の綴れ織と、灰色で単調な学生生活の違いをまざまざと見せ付けたのだ。彼にとって灰色の学生生活とは、世俗的な研究と将来の計画に終始するような、詰まらないものであった。
by levin-ae-111 | 2011-01-19 05:16 | Comments(0)