ETソウル外伝(9)
2011年 01月 25日
それから細い七色の光が、あらゆる方向に飛びまわっていたりする。と、同時にいわゆるチャクラと呼ばれている身体の部分の刺激が強まり、身体を取り巻くエネルギーの渦が大きくなるのを感じる。それだから、瞑想で瞑目している時には、薄暗い場所で眼を開けているよりも明るいと感じる。これらの光の正体は、私の脳神経が何かのエラーを起しているのか、それともニューロンを駆け巡る微弱な電流の光を感じているのか全く判らないが、ともかく瞑想中にはこんな光景を眺めているのだ。
従ってスコットのいう上下に揺れる色の付いた球体も、在り得ないことではないと感じる。
やがてスコットはインドのサラナスに旅をして、仏陀が初めて教えを説いたといわれるストゥーパ(舎利塔)の中で瞑想をした。だが、その旅はスコットにとって不満が募るものでしかなかった。彼は観光客ではなかったし、聖地の写真を撮ったり、周囲を観て回ることが彼がアジアにまで脚を伸ばした目的ではなかった。彼は、早くタイへ帰って自分の修行に集中したくて仕方がなかった。
その時突然に、スコットは初めて『断絶』と思われるものの、生々しい体験をした。理由は彼自身にも判らなかったが、恐らくは滞在していた寺院の影響かも知れないと思っている。そこは心の自由を得るためだけに造られた、自由の庭と呼ばれている寺院だった。
突然のその体験はスコット自身の修行の賜物だったかも知れないし、機が熟した故だったかも知れない。それともスコットが、本当に説明することは何も無いという意味合いで「私には判らないし、そんな事はどうでもよい事だ」と常々話していた禅の師匠と一緒だったからかも知れない。
その理由はともかく、瞑想をして贅沢なほどに美しい自然の中で生活している内に、彼の心は突然、更に澄み渡り、遂にある安らぎを覚えたのだった。スコットは、もう何の葛藤も感じてはいなかった。
自らの光に照らされた絶対的自由と言う意味での、在りのままの心が煌きながら開けていった。彼は全く自由な気持ちになって、ビザが切れた時、本当に満足してアメリカへ帰って行った。悟りを開いた心は、もうタイのジャングルにだけ拘る必要は無かったからだ。
何処へ行っても、何処に居ても、悟った心は常に一緒だから、場所はもう意味を持たなくなっていたのだ。
スコットは帰国しただけでなく、再び大学へも戻った。数ヶ月の間は全てがとても順調だった。そして、ある朝目覚めると、突然にあの恐ろしい重苦しく、無意味な感覚が陰鬱に襲い掛かって来た。
何故そんな感覚が戻ったのか?それが何処から来たのか不明だったが、幸いにもスコットはそれに対処する方法を知っていた。彼には徹底的な禅の修業が必要だった。彼はその場所を、ロードアイランドに見つけ出した。