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by levin-ae-111
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金の鷲の惑星(きんのわしのほし)5-2

 巨大な球体が鈍く光る金属質の光沢を徐々に、海面へと浮上してくる。海面が物体の輪郭に沿って持ち上がり、次の瞬間には膨大な水の幕となって海面へと崩落していく。
よく見ると球体の表面は濡れておらず、球体の大きさに比べると極薄い半透明のブルーの膜が表面を覆っているのが分かる。
やがて半透明のブルーの幕で覆われた機体の一部が左右に開き、巨大な空間に何機かの小型宇宙艇が納められているのが見える。

 この星の北半球の空は巨大な火山噴火によって、たちまちにして細かな火山灰が拡がり始めており元々そう強くはない今の季節の太陽光を遮っていく。
「予想以上にデカイ噴火になったな」
そう呟いたトートの声にも、意外な驚きが見て取れる。
アナトの9号艇は既にヤハウェの母船への進入体制に入っている。
操縦席のランプが点灯し、母船の自動牽引システムラインに9号艇が乗ったことを示している。9号艇は格納庫への入り口に向って、オートパイロットでゆっくりと進んでいる。その隣では少し後方にトートの乗る1号艇が、並ぶようにして同じ様にオートパイロットで格納庫へと導かれている。

9号艇が格納庫へ納まると、床からアームが4本立ち上がり、ガッチリと機体を固定した。ズンという鈍い音が聞こえ、機体が固定されたことを確認したアナトたちは扉を開け、タラップを出すと周囲を注意深く見回しながら降りて行った。
格納庫は向こう側の壁面が見えない程に広く、周囲には自分たちが乗って来た小型艇と似た様な機体が幾つも並んでいる。
人影は一切見当たらず、特に異常もない。開口部からの光景は、仲間の小型艇が次々と入り口の扉を潜って進入し、太い鋼鉄のアームで固定されていくのが見える。
全艇が格納庫に納まると、巨大な扉は意外なほどのスピードで閉まり、一体化したように溶け込んで扉のあった場所が分からなくなった。
格納庫とはいえ武骨な金属の骨組みや、ボルトの類は全く見えない。床は硬いが細かな滑り止めの凹凸が施されており、歩き心地は悪くない。

他の艇の仲間たちが次々とタラップを降りて、物珍しそうに格納庫を見回している。
生体ロボットたちはまだ艇の中に残されていて、一体も降りていない。
「皆、集まれ。ここに集合しろ」
トートの凜とした声が響くと、部下たちが各々の艇の付近から走って1号艇の傍にいる隊長の周囲へと集合していく。
「行くぞ、遅れるな」
アナトと彼の部下たちは、広い格納庫に固い靴音を響かせながら走った。
全員がトートの前に整列すると、それを待っていたかの様にスルスルと乗用カートの列が軽いモーター音を上げながら現れ、彼らの目前に停止した。
その時、初めてニビル人からの指示が発せられた。
「生体ロボットはそのまま艇内に待機させよ。3011と3021はカートに乗り指令室へ出頭せよ、他の者はそのまま待機」

3011トートと3021アナトは、カートの座席に座った。座席は身体の大きなニビル人に合わせてあるからか、大男のトートでもブカブカで座っても身体が安定しない。
不意に滑る様にカートが動き出し、トートは一瞬、ひっくり返りそうになったのを腕で支え、どうにか事なきを得た。
それを見てアナトが珍しく表情を緩めた。トートはそれをジロリと睨み、その後でニャリとニヒルに笑った。
トートには片腕と頼む部下が、ここに来ても笑うほどの余裕を持っている事に頼もしさを感じたのだ。
ここまでは彼らの作戦通りに進んでいる。後はイヴとの連携が上手く行けば、この船からニビル人を追い出してこの忌々しい星を脱出するだけだ。

トートがそんな想いを巡らせている間もカートは滑る様に進み、格納庫を出て様々な施設が並ぶ空間へと差し掛かっている。途中で一旦停止すると、今度は上昇し幾つものフロアをスキップして少ししてまた通路を進み始めた。
「ワクワクしますね、隊長。ニビル人がどんな顔をして俺たちを迎えるか、その時が来たら・・・」
アナトの言葉を手で遮ると、トートはニビル人に報告すべき内容を頭の中で復習した。
まず火山噴火の状況と、被害状況の報告だ。それから・・・反乱を起す。
ヤハウェを人質にとり、他のニビル人を黙らせる。それから女性たちを解放し、ニビル人を船から追い出しこの星に置き去りにする。
そうしてからニビル人に追跡されない様に用心しながら、何処か新天地を探す。
イヴたちと共に、今度は自分がアヌンナキの伝説の男になる、あのニビル人の古代の王トートの名を持つ自分に出来ない筈はない。
トートは自らを鼓舞する様に、心の中で呟いた。
そうする内にカートは一つの部屋の前で停止した。二人が降りると、二人の二倍ほどの高さがある巨大な扉が音もなく開いた。
「入りなさい」との声に促されて、二人は入室した。
巨大なスクリーンが全面に広がり、数名のニビル人がコンソールボックスの前に座り何かの操作をしている。
それらの人々の中央に居た二人のニビル人が椅子から立ち上がり、こちらを振り返った。
by levin-ae-111 | 2013-04-25 05:00 | Comments(0)