天の岩戸神話の意味は?
2013年 09月 17日
その結果、世界は暗くなり人々は大変に困った。神々は相談して、洞窟の前で愉しげに儀式を行い、何事かとアマテラスが岩戸を少し開けて外を覗いた。
この瞬間に待ち構えていたタヂカラオが、岩戸を力任せに開き、アマテラスを洞窟から引っ張り出した。そして、世界は再び明るさを取り戻した、というストーリーの神話である。
この物語の意味は一般的には日食を神話化したものとか、冬至を過ぎて弱まった太陽が力を取り戻す様を表したものと解釈されている。スサノオの乱暴狼藉は、農耕に関する暴風雨の被害を表現したものであるという説もある。
さて儀式を行う際に多くの神々が、祝詞をあげたり祭具を作ったりして活躍する。その時に活躍した神々は、後の世で豪族たちの祖とされた。
例えば八咫鏡を造ったイシコリトメは鏡作氏の祖であり、勾玉を作ったタマノオヤは玉作氏の祖、祝詞をあげたアメノコヤネは中臣氏の祖、捧げものを持つフトダマは忌部氏の祖、アメノウズメは猿女氏の祖とされた。いずれも後の豪族たちが朝廷で司った役目そのものであった。つまり、豪族たちが自らの出自の謂われを示した神話ともいえるのである。
高天原の神々と自分たちの出自を結びつける事は、古代の日本に於いては豪族たちの支配の正当性を示すのが目的であったろう。アマテラスが天皇家の祖とされることから、この神話が示す意味は世が下るにつれて次第に変化してきたのであろうと、容易に想像がつく。
素朴な農耕に関する物語が、そこに登場する神々の威光と結びついた豪族たちの支配の正当性を示し、強固な権力基盤を築く一翼を担うパワーとして利用された、というのが本当のところかも知れない。