知られざる特攻
2010年 01月 20日
それから対船のみならず、B-29への空中特攻も行われていた。
ある意味で圧倒的な火力の敵陣へ突撃したガダルカナル島や硫黄島、沖縄戦での歩兵達の戦いもまた特攻といえるだろう。
死を目前にした気持ちとは、どの様なものだろうか。力尽きる寸前の日本海軍にあって戦艦大和は未だに健在だったが、大和も無謀な特攻へと駆り出された。
大和乗員で生き残った人の証言では「特攻出撃」だと知らされた瞬間、全員血の気が引き顔が青ざめたという。
特攻で死んでいった誰もが、覚悟を決めて死んで行った訳ではないだろう。
特攻隊の護衛機のパイロットをしていたという先生が居られた。妹や弟の小学校の担任をしておられたが、隊員たちは口々に不満をならしていたと言う。最後は「お母さーん」と叫ぶ者が多かったと話されていたと聞いた。
以前に「特攻へのレクイエム」というタイトルの本を読んだ。これは航空特攻で散った若者たちを描いた内容だった。確か主に鹿児島県、知覧飛行場から出撃した人々の事を描いていたと記憶している。
印象に残ったのは穴沢利夫少尉の話だ。彼は婚約者の智恵子さんへ宛てた遺書が、23歳の若者としての素直な心情を伝えてくれている。以下にそれを記す。
智恵子へ
二人で力を合わせて努めて来たがついに実を結ばずに終わった。(中略)
しかし、それとは別に、婚約をしていた男性として、散ってゆく男子として女性であるあなたに少し言って征きたい。
「あなたの幸をの希ふ意外に何者もない。
徒に過去の小儀に拘るなかれ。あなたは過去に生きるのではない。
勇気をもって過去を忘れ、将来に新生活を見出すこと。
あなたは今後の一時々々の現実の中に生きるのだ。穴沢は現実の中にはもう存在しない。
極めて抽象的に流れたかも知れぬが、将来生起する具体的な場面々々で活かしてくれる様、自分勝手な一方的な言葉ではないつもりである。
当地は既に桜も散り果てた。(中略)
いまさらなにを言ふかと自分でも考へるが、ちょっぴり欲を言つてみたい。
一、読みたい本
「万葉集」「芭蕉句集」高村光太郎の「道程」、三次達治の「一点鐘」大木実の「故郷」
二、観たいもの
ラファエルの「聖母子像」、加納芳崖の「悲母観音」
三、聞きたいもの
懐かしき人々の声、シュトラウスのワルツ集
四、智恵子
会いたい・・・・話したい・・・無性に・・・・
婚約者の智恵子さんは、今もご健在であられる。遺族から頂いた俊夫さんの遺品が彼女の宝物だ。智恵子さんは誰とも結婚せず、独身である。
利夫さんは智恵子さんの手編みのマフラーを首に巻き、散って逝った。
自分が彼の様な立場ならば、どうだろうと考えた。
やはり征くだろう。
己の死が、家族や愛する人、郷土を守る盾となると自分にいいきかせて・・・・・
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