身の回りの出来事から、精神世界まで、何でもありのブログです。


by levin-ae-111
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ETソウル外伝(8)

スコットはこの心理学者の結論と両親の好意に感謝し、そして次なるステップへ進む時が来たと判断し、タイ南部のジャングルに旅立つ決心をした。デンバーの寺院が旅立つ手配をしてくれて、間もなくスコットは着陸態勢に入った旅客機の窓に、バンコクの景色が広がるのをながめていた。
彼は今でもこの地方が、どう見えたかを覚えているという。それは一面の密集した濃く厚い緑だった。余りに濃い緑は、所々が黒く見えるほどであったし、山々は東南アジアの木版画や線画に描かれているように、信じられない姿でそそり立っていた。
眼下に広がる風景は、スコットの迷いに満ちた心の様に、押し分けて進んで行くには、余りにも険しく見通しもつかない様に思えた。
飛行機が着陸した時、スコットは遂に自分の人生の目的地に辿り着いた感激を味わった。

 そしてスコットはタイの南部、あるジャングルのワットという僧院に住み始めた。そこはみずみずしい若草の繁るジャングルの真ん中に在り、周囲はゴムの木で囲まれ、冬でも暑いほど(27℃程度ある)で、湿度は100%にもなりそうな場所だった。
無数のスベススベした肌のトカゲが木々の間を這いまわり、いつもキイキイいう猿の鳴き声が聞こえる。彼はクチと呼ばれる小屋に居を定めた。そこでは、夜になると大きなゴキブリが、小屋の薄いトタン板の張られたドアに飛び込んで来た。一晩中そのゴキブリが入り口のドアにぶつかる、ビシッ、バシッという音が響いていた。そして、朝ドアを見ると無数の小さな凹みがあった。
ここなら、全てを忘れるのにうってつけの場所だと思った。瞬く間にスコットは過去の人生を忘れ始めていた。ニューヨーク、家族、そうした記憶が次第にかすんでいった。

 この探求の旅を共にした人々は、誰も英語を話さなかった。指導してくれる師匠は英語を話せたが、彼は何か話すよりも微笑むほうがずっと好きだった。
ここでの修行はデンバーのそれとは比較にならないほどに厳しく、過酷なものだった。
彼らが瞑想している時でも、湿度が高く濃密な暑い空気がベトベトと肌にまとわり付き、座っていても息苦しいほどだった。筋肉が痛み、脚もだるく成ったし、時には背骨も悲鳴を上げるほどの圧力を感じながらの修行だった。それこそ丸一日、瞑想するしか何もすることが無い環境だった。
スコットはもう瞑想中に自分の顔の正面に浮ぶ色の付いた球体が、見えるようにまで成っていた。それは心の形ではなく、実際に目の前を上下に揺れ動く本物の物体として判別できるのだった。それが想像なのか、彼の意識が外に在る客体を物質化させたのか、今でも判らないという。
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by levin-ae-111 | 2011-01-24 05:13 | Comments(0)