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by levin-ae-111
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十六菊花紋の秘密 3

人々の顔立ちや肌の色を観察すると千賀と同じ東洋系の人が多いようだが、白人、黒人など様々な人種が混ざり合っており、さながら国際都市の光景を見ているようだ。
恐らくは、その多くは諸外国から来た人々なのであろう。まるで此処が世界の中心地であるかの様な賑わいがあり、華やいだ雰囲気が漂っている。神殿から離れた遠くの方では、色々な物が売られているようだった。
その向こうに見える町並みや近隣の公共の建物と思われる建造物も含めて、その光景は大規模に繁栄した国際都市の姿そのものだった。
都市の更に向こうは、豊かな緑に囲まれている。現在のこの地とは正反対の豊かな光景は、それが6000年前の光景である。それはまるで、6000年前と現在とが逆転しているような錯覚に陥るほど、近代的な風景と思える程である。

 千賀が立っていたのは、現在は失われてしまった神殿へ至る大きな門の入り口だった。そこで彼は自分が立ち止まった理由が分かった。門の向こうに見える神殿の建物は、愕くほど強固に感じられる美しい建物だった。
神殿には多くの人々が参拝しており、それは日本の正月に見られる何処かの神社の光景に似ていなくもない。世界中から参集したような様々な人種の人々が、真摯に参拝している。
 こんな時代にこれ程の国際都市があろうとは、歴史とは何と不思議なものだろうかと思いその光景を見ていると、他の人々とは明らかに異なる賢者のような面持ちの70歳代くらいの男性が神殿から出てきた。
圧倒的な威光を感じさせるその男性は、レンガ造りの階段をゆっくりと下りてくる。服装は新品と思われる真っ白な一枚の布のようなものを纏っている。
周囲の人々はその老人に会うと、誰もが丁寧に会釈している。彼は神官か王なのだろうか。
その彼が、あろうことか千賀の方に真っ直ぐに歩いてくる。
 どうしてか?千賀は不安と期待の入り混じった心境になったが、その場から動かずに立ち尽くしていた。彼が近づくに従って、心臓の鼓動が高鳴るのが自分でも分かった。

 千賀はそれまで何度も異なる世界へトリップした経験があったが、何れも客観視するものばかりだった。自分の存在がその世界と係わりを持つというのは初めてで、何が起こっているのか判らず、彼は戸惑っていた。
歩みを進めた老人は、遂に千賀の前に辿り付いた。そして威厳に満ちた声で「よく、いらした」と言った。千賀は思わず、無言で会釈した。
 それから老人は千賀に背を向けて、来た道を神殿へと戻って行く。千賀を迎えに来たのは明らかだったので、彼は老人の後をついて行く。
自分を神殿に案内してくれるのか?どうして、自分だけを案内するのか?再び期待と不安がない交ぜになった複雑な気持ちのまま、ゆっくりとした老人の歩みに合わせて歩く。
 老人は神殿の階段を登り始めた。千賀も続いて登り始めたのだが、その階段の見事な造りは高級ホテルのそれのように足で踏むには勿体無いほどに美しいものだった。
そして、二人は神殿の中へと歩み入った。

 神殿の内部は、まるで別次元に足を踏み入れたような実感があった。どっしりとした重量感があり、みごとに並んだ柱は荘厳そのものだった。明らかにただの建物ではなく、神のための建物であるという事が、説明を受けるまでもなく伝わってくる。
美しい迷路の様な廊下を、老人は歩いて行く。足音が洞窟の中を歩いている様に反響している。その洞窟の一番深い所まで行き着くように、千賀は最も奥の間に導かれた。
その部屋の内部は大変に重厚な感じがする美しい壁で囲まれており、その広さは40畳以上もあるだろうか。そして鍾乳洞の中に入ったような、ひんやりとした心地良い涼しさが満ちている。部屋には老人と千賀の二人しかいない。
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by levin-ae-111 | 2011-05-20 05:20 | Comments(0)