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by levin-ae-111
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十六菊花紋の秘密 44

だが、そうと言っても全てを同時に見ているというわけでもない。千賀自身の意識の焦点というものはちゃんと存在し、彼が意識したポイントが常に焦点となって彼の中に自在に視覚化されてくる。
銀河系の中の一点にしか見えない我々の太陽系も、それを意識した瞬間にその全体をつぶさに見ることが出来たように、全てがそのような状況で千賀の視界に映し出される。
何という自由な感覚だろうか、意識が直接にその存在を捉えるからだろうが、それが例え死角に在るものでも意識した瞬間に視覚化することが出来るのだ。
 聴覚にしても同様で、宇宙空間には微妙な音(声と言うべきかも知れない)が、いつも聞こえていた。特定の場所にあるその音を、クローズアップして聞くことが簡単に出来る。
これも空間という意識が、直接に伝えるからだろう。
 千賀はこの時に肉体の目と耳は何と不自由なものだろうかと感じた。私たちの感覚器官は宇宙のこうした空間と意識の働きが、擬似的に生命組織を通して再現されたものに過ぎないという確信が彼の中で生まれていた。私たちの意識は本来、もっともっと自由で広大な世界を知っているのだ。

 実は千賀氏とは比べ物にもならないものの、私も一度だけこの感覚を体験している。
仕事中に突然に意識が拡大し、視界が広がったばかりか近視の私が遠くの小さな陳列棚の商品までもが明瞭に見えた。拡がった視界は、まさに自分の背後までも見ることが出来た。
そして、それが見ようとすると、より明瞭に見える、そんな感じだったのを覚えている。
そして周囲の人々との一体感、圧倒的なほどに他の人々が愛おしいと感じ、自分を包む環境の全てが一つなのだという不思議な、しかし確信に似た感覚は忘れ得ぬものだ。
だが表現のしようもなく、言葉の不自由さ、自分の語彙の少なさに歯がゆい思いがする。
 そして内なる声は、これを真実の宇宙の意識だと教えてくれた。そこにはエゴの入り込む余地がないのだとも内なる声は語った。その出来事から既に15年も経過しているが、今、この千賀氏の本がそれと同じ様なことを書いてくれている事に驚き感激している。

 宇宙とは私たちが普段想像する自由というものを遥かに超えた、想像を絶するほどの自由の領域だったのだ。生きている至福の領域だったのである。
千賀は慣れない感覚のまま、この領域に誘導され、本の僅かな部分を垣間見たに過ぎないことを理解していた。もしも、老人のようにこの領域に完全に合一できたとしたら、それこそ全知全能であるに違いないと千賀は思った。
 昔から人々の信仰を集める観世音菩薩は、音を観ると書くように、この世界の全ての人々を見守り、本気で願う人の声は何処にいる人の声であろうが聞くことが出来るという。
千賀には、これが在り得ることではないかと思えた。無論、観音様ほどではないが、彼も感覚的にはそれに近い体験をしたと感じていた。
「あなた方から見れば、この意識次元は全知全能に見えるかも知れない。しかし、私はまだこれ以上の宇宙次元があることを知っている。
 だが意識はどんな段階にあっても、基本の性質は変わらない。あなた方が子孫を可愛がるように、私はあなた方を見守ることを喜ばしく感じ続けている。私自身もさらに広大な領域を育む存在へと進むことになるだろうし、あなたもそうなるだろう」
 千賀は自分の未来を見せられた思いがした。人間という存在は、意識の成長に比例してより広大な意識領域へと進むものらしい。広大無辺の宇宙空間は、そのことを千賀に実感として感じさせた。

by levin-ae-111 | 2011-07-01 05:41 | Comments(0)