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by levin-ae-111
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戦国の緊急非難

 今日もタイムスクープハンターからのネタである。戦国時代の戦が打ち続く世の中で、当時の農民たちはその過酷な戦をどう切り抜けていたのであろうか。
舞台は西暦1505年(永正2年)尾張の国、柿谷村である。当時は室町時代の後半ころであり、武士の台頭により荘園制度が揺らぎ幕府の威光も失せつつあった。世はまさに戦国時代の到来を告げる物騒な情勢だった。従って各地で守護方の勢力が領地の拡大を狙って、公卿や寺社の荘園を武力で奪い取るという事件が頻発していた。
柿谷村も荘園領主の経営する領地のひとつであり、その領地を狙って守護方の雑兵が侵入するという噂があった。村は貧しいが、それでも、それなりの蓄えもある。
村では敵の襲撃に備え、番頭の儀助(村の代表者)を中心に、主な財産を集め隣村の寺へ預かってもらう事にした。寺では荷物に紙の封印を施し、割り印に当たる印を描き預かり証を書く。更に土地の権利書の写しを作成し、そのコピーを村人にわたす。

 儀助たちが無事に荷物を預けて村に帰ると、揉め事が発生していた。平助という若者が村の食料を盗み食いしたとして、村人たちから糾弾されていた。村の掟では盗み食いは死罪だったが、村人の手を振り切って逃げ出した平吉は村払い(追放)となった。
それよりも村人にはまだまだ仕事があった。寺へ預けなかった食料や財産を隠さねばならない。人々は地面に穴を掘り、大切な物資を隠蔽していく。
取材を受け入れた家族は、源六と亀夫妻に長男の伍助、長女の千代の4人家族だ。この様な事は年に2度か3度あるが、いつも実際に攻めて来るとは限らない。今度も恐らくは噂だけだろう、と源六が話している最中にヒュンと音をたてて飛来した弓矢で村人が倒れた。
突然の雑兵たちの襲撃に、驚き恐れ慄いて暗闇の中を逃げ惑う村人たち。

 源六たち一家は、悲鳴が飛び交う暗闇の中を裏山へと走る。途中で番頭の儀助一家と出会う。儀助たちは荘園領主の館へ向かうと言うが、源六は自分の掘った穴倉へ向うと言う。
裏山を少し登った場所で源六が落ち葉をどけると筵(むしろ)が現れた。そこが非難用の穴倉の入り口だ。この様な場合には多くの農民が穴倉に隠れるか、領主の館へと走ったという。
穴の広さは6畳ほどで、中には水や食料、鎧や刀剣や槍が準備されている。ドラマの設定では、食料の備蓄は4日分となっていた。食料といっても米を干したものだけであり、後は水で空腹を満たすことになる。

 夜が明けて外の様子を長男の伍助が偵察に出る。村には雑兵がたむろし、彼らは地面を掘り返している。農民たちが埋めた物資を探しているのだ。
非難した次の日の夜、源六が用心の為に張り巡らせておいた紐に誰かが触れ、穴の中で鳴子がガランガランと音を立てた。緊張が走る、が、穴に転げ落ちる様にして入って来たのは負傷した番頭の儀助だった。移動の途中で皆は殺されたという。更に村の資産を預けた寺も焼き討ちされ、彼らの主だった財産は焼失したとも聞かされる。
村には相変らず雑兵が居座り、遂には土地の権利書も発見されてしまう。更には再び鳴子が音を立て、また緊張が穴倉を支配する。
今度は村を追放になった平吉が、やはり負傷して穴倉へと転がり込んで来たのだ。平吉は隣村の衆と山を逃げている内に襲われ、何が何だか分からぬ内に負傷したという。
番頭の儀助は平吉を追い出そうと言うが、源六はこれを断り置いてやる事にした。人数が増えた分、食料の分配が減った。
加えて雑兵たちが立ち去る気配は無い。7日目に食料も水も底を突き、このままでは死を待つだけの決定的な危機を迎える。

 そんな中で平吉は自ら水汲みを買って出る。その代わり、罪を許して欲しいと必死で願い出たので、源六はこれを承諾した。穴を出た平吉だったが、帰って来ることはなかった。
騙されたと憤る男たち、今度はわしが行くと名乗り出た伍助を抑え、父親の源六が水汲みに村の井戸へ向う。敵の様子を伺いながら井戸に到達し、何とか桶を調達して水を汲んだ。
だが、走り出そうとした刹那、雑兵に見つかり源六は捕まってしまう。
遂に意を決した長男である伍助が、父親の救出と村の奪還を目指して村へ向かうという。反対する姉の千代だったが、母の亀は村を取り戻せ、百姓の意地を見せろと心を鬼にして励ます。
番頭の儀助も立ち上がり、自分も行くと鎧を身につける。
成功したら村の中心にある鐘を鳴らすと約束して、二人は槍と刀で武装し穴を出る。

 農民といっても、当時は兵士として戦場に召集されることも多く、彼らは各々に鎧や武器を持っていた。私の父親の実家は山奥の寒村にあったが、父が子供の頃には鎧や槍や刀が在ったという。武士でもないのにと、その話を聞かされた時は不思議に思ったが、越中の山奥までは秀吉の刀狩も及ばなかったのか、或いはその後の時代にでも密かに先祖が用意したものかも知れないとも考えたものだった。

 伍助は現代では中学生くらいの年齢だが、この時代にはもう立派な働き手である。二人は足音を忍ばせて村に入り、無防備な雑兵たちの不意を衝いて一人一人を始末していく。
伍助たちは雑兵の背後から、容赦なく槍を突き刺す。そして、喉を刀で切り裂き息の根を止める。そして雑兵たちの声がする家の前で二手に分かれ、表と裏から同時に切り込む。
不意の敵襲に慌てた雑兵たちは、二人の農民に手も無く捻られて行く。悲鳴と怒号の中で逃げる雑兵の最後の一人を伍助が突く、ひっくり返ったところへ再び槍を突き込まれた雑兵は絶命した。背後には儀助に助け出された源六の笑顔があった。
伍助は約束通りに鐘を鳴らした。何度も何度も、穴倉に隠れている母と姉に伝える為に打ち続けた。それは勝利の雄叫びであり、父と村を救った歓喜の鐘の音であった。

悦び勇んで穴倉を出る母と姉。しかし周囲には多くの雑兵が槍を構えて待ち伏せていた。
絶体絶命のピンチ!もう駄目だと覚悟した時、ヒュンヒュンと矢の唸りが辺りに響き渡り雑兵たちは悲鳴も上げられず次々に倒れていく。
天の助けだった。逃げたと思っていた平吉が、国侍(守護勢)を討伐する為に出た近在の村人と共に帰って来たのだ。
平吉は水汲みに出たが、雑兵が多く無理だと考え救援を求めに走っていたのだ。
逃げたと思ったと言った亀に、平吉は二度も逃げ出す訳はないと胸を張った。村で伍助が力いっぱいに打ち鳴らす鐘の音がまだ響いていた。
逃げていた場所から次々と帰って来た村人たちと、命の有った事を喜びあう人々を背にレポーターの沢嶋はこの時代を後にしたのだった。

 それにしても、何時の時代も民衆は搾取されるだけの存在でしかないのであろうか。この物語の中で源六の長女千代が、領主が勝とうが守護が勝とうが自分たちには関係がないと言っていた。
つまり自分たちは多くの年貢を取られ、時にはこうした略奪もあり、結局は楽に成らないという事である。
今の私たちも似た様な情況にあると、私は思う。領民の事など考えずに、己の勢力拡大ばかりを目論んでいた当時の守護や地頭たちと、現代の政治家たちの姿が重なって見えてしまう。
by levin-ae-111 | 2011-09-25 05:35 | Comments(0)