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by levin-ae-111
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小説「ぬしさまへ」


 時代設定は江戸時代の江戸、日本橋に大きなお店を構える長崎屋を舞台に繰り広げられる物語だ。変わっているのは主人公が長崎屋の病弱な若旦那というところで、その周囲に妖怪たちが頻繁に登場することだ。
記憶違いでなければ、恐らくこれを原作に映画が造られている筈である。

 十七になる若旦那の一太郎は、病弱な故に周囲の者から蜂蜜よりも甘いくらいに甘やかされている。そして常に二人の手代(仁吉と佐助)が付いており、あれこれと世話を焼いている。
この二人が実は何千年も生きている大妖怪で、一太郎の部屋には小鬼やら屏風に住むつくも神やらが常に出入りしている。

一太郎自身は世話を焼き過ぎる周囲に不満を持っているが、頭は良く周囲の困り事やら事件やらを妖怪たちの協力を得て解決していくというものだ。
但し一太郎がそういう事に首を突っ込むのは、体調が良くても外出さえ儘成らない退屈をどうにかしのぐ為である。そんな一太郎を退屈させまいと、妖怪たちが色々な情報を巷から探して持って来るのである。

一太郎の周囲には幼馴染の菓子屋の若旦那や、十手持ちの親分、奉公人、腹違いの兄など様々な人物が登場する。可笑しくて少し悲しい人間の性を、少し感覚のズレテいる妖怪たちと供に垣間見る話しの内容は、心をジンとさせる。
設定が江戸時代であり、しかも大店の坊ちゃんと妖怪たちが繰り広げる非日常的な物語は、疲れた心を暖かく解きほぐしてくれる。

「ぬしさまへ」
畠中 恵 著
新潮社刊
by levin-ae-111 | 2012-11-05 05:16 | Comments(0)