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by levin-ae-111
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金の鷲の惑星(きんのわしのほし)5-1

ヤハゥエの指揮する母船は今この星の海洋深くに潜行していて、惑星全体に散らばる全ての鉱山を統括し管理している。トートたちが警備する鉱山も、無論のこと母船の管理下にあった。
トートたちが居住する場所は第一の坑道近くに設けられていたが、現在は金を掘り尽くして廃坑になっている。現在はそこから数十キロ離れた場所に、新たな金脈が発見されそこで作業をしていた。
居住地の地下から母船に気取られないように認証シグナルをオフにし、母船の検索システムをすり抜ける措置を施した9号艇がゆっくりと発進した。
これを指揮するのは副隊長のアナトだ。
9号艇には掘削機の先頭部分と数発の掘削用の特殊爆弾が積まれている。

 9号艇は金脈とマグマの流れをスキャンした地中地図を頼りに、その上空を目指している。狙いはマグマの流れやマグマ溜まりと呼ばれる場所で、そこを爆撃して火山噴火を誘発させる。
母船は同じ惑星に在っても、トートたちアヌンナキの男性は滅多に乗船を許されない。そこに居ることを許されているアヌンナキは、生体ロボット製造を目的とした女性たちだけである。
トートたち男性のアヌンナキが母船に迎え入れられるのは、非常時の緊急避難の場合だけと決まっていた。
彼らはそれを目論んでいる。
「マップから逸れるなよ、上手くやってくれ」
アナトの言葉にパイロットが頷く。
「爆弾の準備が出来ました」と、他の部下が報告した。
「炸裂深度は間違いないのか、もう一度点検しろ」
掘削用の特殊爆弾は投下されると地中を指定された深度まで掘り進み、到着するとその場で爆発する。弾頭には特殊な仕掛けがあり、爆風は爆弾の掘り進んだルートに集約されて噴出する。

 徐々に高度を上げていく9号艇に続いて、トートが指揮する他の8隻もゆっくりと居住地の地下駐機場を出て行く。トートたちは10隻の小型宇宙艇を保有していたが、一隻はわざと発進させなかった。発進が間に合わず、一隻は災害に呑まれたのである。
先行する9号艇は地中マップのマグマの流れを辿りながら、計算に従った間隔で地下掘削用の特殊爆弾を一発ずつ順に投下していく。
それは石切り場で岩盤に穴を開けて石を切り出すように、正確に投下され爆弾は目指す深度をめがけて地中へと潜っていく。
全ての爆弾が設定どおりに炸裂すれば、粘性の低いこの地下のマグマが一斉に噴出し計算どおりならば緊急避難に値するに十分な大規模な噴火になる筈だ。
爆弾を投下し終えたアナトの9号艇は、急激に高度を上げている。
「緊急信号の準備をしろ。各自、武器の点検を再度おこなえ」
アナトはニヒルな笑みを浮かべて、その手でニビル人を地獄送りにする様を想った。

 数分後、爆弾は指定深度に達し、次々と炸裂した。
爆弾が潜る際に開けた穴から炎と煙が激しく噴出し、次いで大きな地震が地殻を揺さぶった。
周囲の丘や山は雪崩を打って崩れ落ち、掘削機の在った廃坑も悉く潰れていく。しばらくして爆弾の穴からトートたちの狙いどおりに、粘性の低いマグマが煮えたぎりながら噴出し、辺りの草木を情け容赦なく炎で包み込みながら、現在の金鉱も彼らの住居も灼熱地獄に変えていく。
溶岩の流れは時速十数キロで進み瞬く間に広がっていく、その一方で地殻の亀裂も拡大し地下で水に触れたマグマは強烈な水蒸気爆発を発生させた。
その爆発は岩盤や土を空高く舞い上がらせ、数瞬で数百メートルもの高度に達する。

 トートたちはマグマ噴出のタイミングに合わせて、母船へ連絡を入れる。緊急避難の要請である。
「第5鉱山付近で火山爆発です。警備隊から緊急避難時の収容要請あり!!」
ヤハゥエの副官であるニンフが報告を受けて、母船の司令室へと急いで入って来た。
ニンフはアヌンナキと生体ロボットたちの開発主任を務めた人物で、ニビル人としては珍しいほどアヌンナキたちに好意的だった。
「スキャンして、状況を確認しろ。アヌンナキたちはどの程度脱出したかもだ。早くしろ」更にニンフはヤハゥエの許可を得ずに母船の浮上を指令する。
「しかし、司令官の許可がまだです」
「今は時間がない、緊急避難を許可すると伝えろ」
部下の進言を無視して、ニンフは矢継ぎ早にトートたちの収容のための指示を出す。

 その頃トートの指揮する小型宇宙艇の一群は、緩やかな上昇を始めていた。急上昇も可能だが、それでは乗せている生体ロボットたちがもたない。
アヌンナキたちが苛立つほどゆっくりと上昇する小型艇の群れは、予想以上の爆発で高く舞い上がった火山灰に包まれてしまう。
噴火で発生した無数の火山雷と吹き飛んだ岩盤、粘着性の強い火山灰が容赦なく小型艇を襲う。
「もっと速く上昇を、隊長!」
部下の悲鳴にもトートは動じない、激しい揺れに堪えるために両足を踏ん張りながら、じっとモニター画面を見詰めている。
許可はまだか、トートはその方が気になっている。
「4号艇、墜ちます!!」部下が悲痛な声を上げた。

4号艇は上昇姿勢から一転して、下降を始めていた。機体から薄い煙を吐いてはいたが、激しい火山灰の舞う空ではそれは見えない。
一旦その状態になると、飛び交う岩の破片が機体に当たる度に機体が破損し、4号艇はボロボロになりながら落下して行った。
「機関部をやられたな」と、モニター越しに観たトートが悲壮感を漂わせる部下を尻目に冷静に呟く。
4号艇は機関部の破損で動力を失った、そうなるとシールドも消えて只の金属の張りぼてでしかなくなる。
それに続き8号艇も火山雷が集中する瀑布のような火山灰の濃い幕に突っ込み、動力を失って墜落してしまった。
9号艇のアナトは他の艇よりも高く上昇しており、その様子をつぶさにモニターしている。仲間の船が墜ちても、何故かアナトは笑みを浮かべている。
実はそれも予定通りで、墜落した2隻には誰も乗っていない。これも、この災害をよりリアルに見せるための作戦の一部だったからだ。その事はトートと自分、一部の部下しか知らない。2隻の機関部には、墜落する様に細工が施されていた。

アナトは殊更に悲壮感を漂わせて、母船へ状況を報告し続けた。母船ではニンフが状況をモニターさせながら、噴火の規模などを計測させている。
3021(アナト)からの報告では、既に2隻の小型宇宙艇が墜落したのだ。いかに古い船とはいえ、ある程度のシールドを装備している物が、あれほど簡単に落ちるとは・・・。
これは十分に緊急避難に値する事態に違いない、私の判断は間違っていない。
ニンフがそう考えている時、ヤハゥエが司令室に入って来た。
姿勢を正して一礼したニンフに片手を軽く挙げて応えただけで、母船を浮上させた事についてヤハゥエは何も言わずにモニターに映し出された惨劇に見入っている。
ヤハゥエの母船は、海面を割って鈍い銀色に光る巨体を海上に現した。
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by levin-ae-111 | 2013-04-14 07:56 | Comments(0)