ゼータレチクル星人の歴史Ⅰ
2013年 12月 09日
彼らは蜂や蟻といった社会生活を営む昆虫に似た精神構造なのだという。これをリサに語ったのはジャーメインという肉体を持たない集合意識だとリサは述べている。
ジャーメインは過去のゼータレチクル星と現在の地球の状況が、非常に似通っていると指摘し、地球の抱える諸問題を乗り越えて欲しいと考えている様だ。
人間型生命体の故郷は琴座のリラ星にあり、ゼータレチクル星人の祖先(エイペックス星人)も例外ではない。
人間型生命体の黎明期には実に多様な人種と文化が存在していた。その中でゼータレチクル星人の祖先が住んでいた星はエイペックスと呼ばれていた。エイペックスは多くの点で地球に似た星であった。
他の星々からも種々雑多な人々がエイベックスに集まり、惑星はまるで異なる人種と異文化の坩堝の様であり、その様は現在の地球を遥かに上回るものだったらしい。
その状況の中で人々の意識は変化し、多くの思想や主義主張が蔓延り、人々の心は意固地になり個人主義が幅を利かせる様なった。そして統制がとれない社会へと変貌していったものらしい。
この時代のゼータレチクル星人は私達がイメージする人型のモンスターではなく、現在の私達と同様の外見をした普通の種族だった。
エイペックスの文明は数千年に渡り続いて栄えていたが、人々の集合意識の底には不調和が横たわっていた。その原因はテクノロジーの急激な発達に、人々の精神的な進歩が追いつかなく成ったことである。
そのギャップが大きく成るに従い、惑星環境は激しく破壊されていった。有毒物質と核爆発の汚染に、惑星は悲鳴を上げた。極端な汚染により大気は活力を失い、植物は十分な酸素の供給が出来なく成った。大気の組成バランスが破壊され、酸素量と二酸化炭素量のバランスが完全に狂ってしまったのだ。
人々はようやく対策に乗り出したが、既に遅く対処可能なレベルではなくなっていた。沢山の人々が病気や天変地異で命を無くした。
人々は最悪の事態を予想し地上生活を諦め、地下シェルターの建設を始めた。地下では地上の太陽光や酸素に依存しない代替えエネルギーが使用され、地上の生態系から完全に切り離された生活が始まる。
安全な地下に生活を移し絶滅を免れた彼らだが、空を見上げる事もなく一生を岩に囲まれた地下空間で過ごすことは、人々に大きなショックと苦痛をもたらした。
しかしどうして宇宙船を建造する技術を持った人々が、他の惑星への移住を考えなかったのだろうか。実際に、そうする事は可能だったとリサはいう。
だがエイペックス星人たちは、惑星への愛着と開拓者としてのこだわりを持っていた。そして多くエイぺックス星人は、他の惑星へ移住しても同様の問題が再起するであろう事を察知していた。一部の人々は琴座の複数の惑星へ移住したが、大部分の人々は地下生活を敢えて選択した。