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by levin-ae-111
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2011年 05月 21日 ( 1 )

十六菊花紋の秘密 4

老人は言った。
「私はシュメールの最高神官だ」
老人の声は厳かに周囲の壁に反響し、神秘的な雰囲気がかもし出された。神官は千賀を椅子に座らせ、自らもその向かいの椅子に腰かけた。
現代人とは明らかに異なる神官の風貌と雰囲気に、千賀は圧倒されていた。何という事になったのだろう。巨大な石造りの神殿の奥の間で重厚で圧倒的な壁に囲まれた部屋で、向かい合う神官を見ながら、千賀の心臓の鼓動はいよいよ限界に近くなった。
その時、彼の口から思わぬ言葉が出た。
「日本から友をお迎えできて、光栄だ」
この言葉で千賀の理性は更に混乱した。自分は招かれて来たのか?何故、日本という現代の国名を知っているのか?自分の見ているものは幻想なのか。
そんな千賀の心情を判っているのか、神官と名乗った老人は言う。
「何故あなたはこのシュメールの地に来たのか、自身の心情を不可解に感じていることだろう。シュメールの地には現在の世界に対して、あなた方がまだ知らない重要な働きがあるのだ」
その言葉が、何を意味しているのか千賀には全く判らなかった。

老人は戸惑う千賀をよそに、言葉を続ける。
「人類の文明が、この地から始まったのは偶然ではない。我々シュメールの神官は、時間と空間の法則を知っていた。それぞれその時には、それぞれの時をリードする場というものがあるのだ。
人類文明の誕生を導いた我々は、そこにひとつの法則があるのを知っている。その法則は、人類の総ての歴史に例外なく流れ、今日まで続いている。今日、あなたをここへ招いたのは、この我々の英知をあなたに授けるためだ」
どうして、その様な知識を授けられる必要があるのか?千賀にとっては、何もかも不可解としか言いようがない。次に老人の神官が口にした言葉は、更に千賀を困惑させる。
「あなたもご存知のように、我々シュメールの遺産は殆ど消滅し、新たな時代の始まりを認識した」
それはどうやらアメリカ軍のイラク攻撃により、失われた人類最古の遺跡のことを意味するようだ。どうやら、この年老いた神官は、単に6000年前に居るのではないらしい。
老人は続ける。
「私は肉体を離れた存在として、あなた方を今も見ている。シュメールは現在のあなた方の文明の産みの親だ。地球上の様々な文明は、シュメールから伸びた小枝の様にして始まった。私はその長の一人として、子孫であるあなた方を見守り続けている」

 ゆったりとした表情で千賀に話しかけてくる老人の様は、さながら神を思わせる。スッと真っ直ぐに伸びた背筋は何か普通でない異次元的なエネルギーを発している様に感じさせ、照明がなく僅かな採光があるのみで薄暗い室内でも老人の周囲だけは明るさが増して、輝いている様に見える。
「生命に寿命があるように、人類の集合体としての命、文明なるものにも寿命があることを我々は知っている。そして、その集合体としての命の誕生の地は、その終わりの日までその文明の全てを象徴するのだ。故郷の消滅は、最初から計算されていたことだ。
 シュメールに始まったこの文明は、今、命の時を終えようとしている。私は命の時を終わろうとするこの文明の担い手として、これから始まろうとする新たな命に英知を授けたい」
文明にも寿命がある・・・余りにも常識と異なる老人の言に千賀の思考は殆どフリーズしていた。
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by levin-ae-111 | 2011-05-21 06:35 | Comments(0)